取締役が利益相反取引(会社と取締役の利益が相反する取引)を行って、会社に損害を与えたような場合には、攻撃側は、そのことを理由として、取締役(利益相反取引を行った取締役に限りません)を攻撃することを検討します。

そこで、ここでは、次の点について解説をします。
・利益相反取引に関する法律上のルール
・取締役が利益相反取引を行った場合の攻撃方法

利益相反取引に関する法律上のルール

取締役は、利益相反取引を行おうとする場合(次の場合)には、(取締役会設置会社では)その取引について重要な事実を開示して、取締役会の承認を得なければなりません。
・自己又は第三者のために会社と取引を行おうとする場合。
・会社が取締役の債務を保証すること、その他取締役以外の者との間において会社と取締役の利益が相反する取引を行おうとする場合。

利益相反取引を行った取締役は、承認を得たかどうかにかかわらず、(取締役会設置会社では)取引後遅滞なく、その取引について重要な事実を取締役会に報告しなければなりません。

取締役が承認を得ないで利益相反取引を行った場合は、①その取締役は会社に対して損害賠償責任を負い、また、②取締役解任の正当事由になる可能性があります。

取締役が承認を得て利益相反取引を行った場合でも、その利益相反取引により会社に損害が生じたときは、その利益相反取引に関して任務懈怠のある取締役(利益相反取引を行った取締役に限りません)は、会社に対し、損害賠償責任を負う可能性があります。

※承認を得ないで行われた利益相反取引は無効ですが(ただし、追認されれば有効となります)、取締役の側から無効を主張することはできません。
また、会社が第三者に対して無効を主張するためには、その第三者の悪意(取締役会の承認を得ていないことを知っていること)を立証しなければなりません。

取締役が利益相反取引を行った場合の攻撃方法

取締役が利益相反取引を行ったことにより、取締役(利益相反取引を行った取締役に限りません)が会社に対して損害賠償責任を負う場合、攻撃側は、株主代表訴訟の提起等により、取締役の責任を追及することを検討します。

取締役が承認を得ないで利益相反取引を行った場合、攻撃側は、①株主総会における取締役の解任決議、②取締役の解任の訴え等により、利益相反取引を行った取締役を解任することを検討します。